COLUMN

01 May 2025

早春を彩る妖精、チューリップ サクサティリス  

早咲きのサクサティリスは、淡いピンクに黄色い底を持つ繊細な花姿が魅力です。楚々とした佇まいは、まるで春の妖精そのもの。一輪でも庭先や窓辺を優しく彩り、その可憐な存在感は見る人の心を惹きつけます。名前の由来はラテン語の「岩の間に生える」。最初に発見されたのが、ギリシャ・クレタ島の岩の多い斜面だったことにちなんでいます。開花時期は早咲きで、シンプルな一重咲きでありながら、時には一本の茎から複数の愛らしい花を咲かせることもあり、その姿は春の喜びを倍増させてくれます。

 

近年、チューリップの世界は多様性を増し、個性的な色や形、開花時期を持つ品種が人気を集めています。咲き方による分類だけでも、清楚な一重咲きから華やかな八重咲き、優雅なユリ咲き、繊細なフリンジ咲き、個性的なパーロット咲きなど様々です。

 

球根を植える秋(10~11月)から冬の間は、春にどんな美しい花を咲かせてくれるのか、想像力を膨らませながら待つ楽しみがあります。一般的に、チューリップの花は咲き始めてから1~2週間ほど楽しめますが、冬に開花するアイスチューリップは例外です。これは、球根を一旦低温環境に置くことで、春が来たと錯覚させて咲かせる栽培方法。気温が低いため、通常よりも長く、約1ヶ月も花を観賞できるそうです。「春が来た」とチューリップを欺くようにも思えますが、それだけ多様な形でチューリップのニーズが高まっているのでしょう。

 

サクサティリスのような原種系の、素朴でありながらも力強い美しさも再評価されています。多様なチューリップが、私たちの目を楽しませ、心を豊かにしてくれるのです。今年の秋には、ぜひお庭にサクサティリスの球根を植えて、春の訪れを心待ちにする喜びを体験してみませんか。小さな妖精が特別な春を届けてくれるかもしれません。

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