COLUMN

17 Nov 2025

私が出会った印象深い樹木   ~地域と共に生きる「寸原(ずんばら)のケヤキ」再生の歩み~

兵庫県丹波篠山市に佇む一本のケヤキ。
地元で親しみを込めて「けやきさん」と呼ばれるこの大ケヤキは、樹齢300年以上、高さ約15メートル、幹周約8.5メートルを誇る、兵庫県内でも3番目の巨樹です。特徴的な雲竜型の枝ぶりが非常に珍しく、かつては子どもたちが登って遊ぶ姿も見られるなど、長年にわたり地域の象徴として深く愛されてきました。

しかし、かつて周辺の土地が残土処分地として使われたことをきっかけに、根元に大量の土が盛られ、重機によって地表が踏み固められてしまいました。その結果、根が呼吸できず、木は次第に衰えていったのです。

 

「なんとかこの木を守りたい」
地域の声を受け、樹木医の助言のもとで、根元の土を少しずつ手作業で取り除く再生活動が始まりました。使用するのはスコップやクワ、つるはし、一輪車など。根を傷つけないよう、コツコツと丁寧に進めて、近年はエアースコップも導入され、作業の幅が広がりました。
私もこの活動の一部に参加させていただく機会があり、地域の方々とともに一本の木と向き合う時間を共有しました。

 

現在では、新芽が出たり、元気な根が伸びたりと、少しずつ樹勢回復の兆しが見られるそうです。下から見上げると、空を覆うほどに葉が茂り、まるで「けやきさん」が再び息を吹き返したかのよう。高齢樹木のため、回復にはまだ時間がかかるといわれていますが、確かな生命の力を感じます。

 

自然の力強さ、そして地域の人々の思いがひとつになったこの取り組みを通じて、私自身も「守り、育てる」ということの大切さと責任を改めて実感しました。

 

所在地:兵庫県丹波篠山市黒田

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